2018年8月30日 UP
マネジメント

中長期開発こそが、企業の“未来”と新時代の事業を創生する~日本的経営の学び舎Ⅱ~

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8月22日(水)、技術経営士の会 & VALCREATION 共催企画「日本的経営の学び舎」第二回目を開催いたしました。
<第一回目のレポートはこちらから>
日本的経営の学び舎は、戦後復興からバブル経済、第三次産業革命、リーマンショックを経験され、日本経済の最前線で活躍された「技術経営士」を講師に迎え、長い経験から得られた知見や知恵を「日本的経営」という切り口から、明日を担う若き次世代リーダーに向けて伝授いただく場です。

 

第二回目は、技術経営士の会 幹事であり、株式会社日立メディコ 元代表執行役 執行役社長 の三木一克さんを講師に迎え、三木さんが日立製作所時代に研究所で学んだことや日立メディコ時代に企業経営を通して気づいたことについてご講話いただきました。
 

部下の成長こそ最大の喜びであると気づき,マネジメントの道へ

まず、三木さんのご講話の前に、各参加者がどのような事業を経営していて、今回どのような目的で参加しているのか、という点について自己紹介を行いました。参加者の平均年齢はおおよそ20代後半。企業勤めの経験もなく学生時代に起業し現在もその延長で経営を行っている方、または企業勤務を数年経て、志を持って起業したばかりという方など、大変意欲的な若手経営者にご参加いただきました。

三木さんも普段なかなか触れ合うことのないベンチャー経営者との出会いを喜ばれ、41年間の企業経験で学んだことが生きた事例としてお役に立てれば嬉しいです、と前置きして、講話がスタートいたしました。

三木さんは京都大学大学院を卒業後、専攻としていた“原子力発電”の技術を活かすため、日本の原子力メーカーとして力を発揮していた日立製作所への入社を決めます。三木さんの経歴を大きく分けると、初めの30年間が「研究開発」、後半が「マネジメント」となります。部長就任後はプレイングマネージャーという選択肢もありましたが、自分の部下が良い仕事をやって、それが認められる喜びのほうが遥かに大きいと感じてマネジメントの道を進むことを決意。そして、関連会社である日立メディコの代表へと就任されました。
研究開発として新しいアイデアを創り出す立場と、創った技術を具体的な事業へ転換する立場、その両方を体験できたことが三木さんの企業人生の中では大きかったと言います。
 

中長期研究開発が企業の“未来”を創る

三木さんは講話の中で、企業の研究所に求められる役割は「企業の“未来”を創生」することだと強調しました。しかし、実際に研究所で生み出された新しいアイデアが事業をとして実を結ぶまでには約30年という年月がかかります。つまり「企業の“未来”を創生」するためには「中長期研究開発」は不可欠であり、すでに業界内でトップレベルの技術力を持っていたとしてもいつ抜かれてしまうかは分からない。組織の成長力や結束力、競争力を長期に渡って維持をしていくためにも「中長期研究開発」は必要であると研究現場の実態を伝えました。

また、三木さんが日立製作所時代はTOYOTAとの人材交流を積極的に行っていたようで、三木さんはTOYOTAから来ていた技術者の話を聞いて大いに危機感を覚えたと言います。TOYOTAの強みは「人材育成」にあり、入社時の新卒の能力は明らかに日立の方が上なのに3年経つとTOYOTAに抜かれてしまっているということが多々あったようです。TOYOTAは「モノづくり」と並行して「人づくり」を行うこと、手間と時間をかけてじっくりと人材育成を行うことを実践しており、達成が難しい大きな目標を掲げることで技術者一人ひとりにブレークスルーするチャンスを与え、短期間で一人ひとりの育成を図っていました。
さらには、どのような役職の部長であっても、皆“金太郎アメ”のように同じことを言う。TOYOTAの経営理念や価値観が一人ひとりに深く浸透していることを感じ、当時はTOYOTAから大いに学びました、と三木さんは話しました。
 

感動をあたえる製品作りは、活気のある職場の実現から

そして、日立メディコ時代、三木さんはこれまでの学びを総動員して経営理念を作成しました。三木さんが一番重視したのが「活気ある職場の実現」。三木さんは活気ある職場で作り出された製品こそがお客様に感動をもたらすと確信し、まずは従業員一人ひとりが仕事に誇りとやりがいを持って生き生きと働くことが重要であると全社員を集めて伝えたと言います。「日立メディコから日立グループ全体を変革していこう」という情熱もち、当時は全力で取り組んでいたと三木さんは熱く語りました。
 
三木さんの講話のあとは、皆で食事をとりながら、自由に意見交換を行いました。

三木さんのお話の中でも、特に「アイデアが事業になるまで30年かかる」という部分に質問が多く、「最終的な事業化に向けて、研究の段階ではどれくらいのアイデアを仕込んでいるのか?」「人材育成も中長期的視点を持って取り組んでいるのか?」「人材が永く定着しない現代において、中長期的な人材採用は難しいのではないか?」「優秀な人材を定着させるためにはどのようにすればよいのか?」など議論を交わしました。

意見交換会は、盛り上がりも冷めぬうちに終了し、名残を惜しみつつも、参加者は皆、素晴らしいメンターや目線の高い仲間との出会いに感謝していました。

 
次回の「日本的経営の学び舎」は、9月19日(水)に、久野勝邦さん(元日立製作所 副社長)を講師に迎え、「日本人の特性と日本的経営を磨くために必要な要素」についてお話しいただきます。

次世代を担う志ある若手経営者、若手ビジネスパーソンのご参加をお待ちしております。

(文責:VALMEDIA編集部ライター 遠藤あずさ)

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