- 2018年12月27日 UP
- マネジメント
創業319年のにんべん社に学ぶ、永続経営とイノベーション
みなさん、こんにちは。
「次世代リーダーへ贈る、100年経営のすすめ」第七弾として、(一社)100年経営研究機構第17回研究会の学びをレポートいたします。
「100年企業」と一口に言うのは簡単ですが、「100年企業」一社一社には現代に至るまでの様々なストーリーがあり、各社とも山や谷を乗り越え100年という節目を迎えています。本コンテンツでは、日本に3万5千社以上あるという「100年企業」それぞれのストーリーをお伝えすることで『100年続く普遍的な要因』を見出し、その学びを少しでも実務に生かしていただきたい、という思いで配信いたします。
今回は第七弾として、株式会社にんべん代表取締役 髙津克幸社長より「にんべん319年の歩みと永続経営の秘訣」についてお話を伺いました。それではご覧ください。
江戸の中心地“日本橋”で創業し、日本橋と共に成長。
にんべんは1699年創業。現在、従業員数約200名の日本橋に本社を構える食品メーカーとして、鰹節及び加工食品の製造販売を行っていますが、創業当時は川のたもとに屋台を並べて商売をしていました。江戸時代の日本橋は魚河岸の機能を担っており、川を中心に様々な商売が盛んに行われていました。当時から今日にいたるまで同じ日本橋で発展してきた企業は多く、有名どころで言うと国分、山本海苔、榮太郎、西川産業、山本山などがあります。
日本橋に長寿企業が多い要因の一つとして、髙津社長は「古いお店こそ新しいことを始めている」という特徴をあげました。
日本橋からは多くの“日本初”が生まれているようで、例えば玉露を初めて製造した山本山。日本初の果物専門店千疋屋。味付け海苔を開発した山本海苔。トロの握り寿司を初めて出した吉野鮨本店。甘納豆を製造した榮太郎など。
日本橋で新しい発想が生まれたのには、その時代その場所ならではの理由があります。江戸時代の日本橋エリアでは、魚河岸/金座(日本銀行)/芝居小屋/吉原など、商売/金融/文化/風俗すべてが集中していました。また日本橋の西には江戸城、つまり武家社会が広がっており商売の種がたくさん落ちていたのです。様々な商品や情報が行き交う日本橋において新しい発想が次々と生み出されたのも頷けるでしょう。
当時の常識を打ち破る新しいチャレンジで経営を向上。
にんべんは創業後の1704年に鰹節の問屋として正式にスタートし、当主が三重県四日市出身であることから“伊勢谷伊兵衛”と名乗りました。のちに当主の名字と名前の“亻(にんべん)”をとって社名となります。にんべんでは300年続く過程で経営の分岐点となる大きなチャレンジが三つあり、一つに現金掛け値なしを行ったことがあげられます。江戸時代の商売方法は、現場ではお金のやり取りをせずに貸し借りを帳簿につけ年に2回精算を行うという方式でしたが、当時の当主はその常識を打ち破り、鰹節に正価を定めてその場でお金をもらう商売へと切り替えます。そのことにより1年中お金がまわりキャッシュフローが安定するようになりました
二つ目が江戸の末期に商品券をつくったこと。三つ目が鰹節にカビをつけて熟成乾燥させることでより品質の良い鰹節を生産できるようになったことです。
髙津社長は「にんべんが300年超続いた要因は、新しいことにチャレンジしたこと。また危機をチャンスに変えて乗り越えていったこと。長い間の信用と信頼を大切にしたこと。」と話しました。
これまでに事業を承継する男児がいないという“危機”が幾度とあったそうですが、その度に優秀な方が養子として継いでくださり、ここまで続けることができました。中興の祖には養子が多く、まさに危機をチャンスに変えた事例と言えるでしょう。
小さい頃から鰹節と一緒。高校卒業時には継ぐことを決意。
事業承継について、髙津社長ご自身は小さい頃から祖父母に「あなたが継ぐのよ」と言われて鰹節を毎日見せられ、継ぐのが当然だと思って育ったと言います。高校卒業時に具体的な選択を迫られて「家を継ぎます」と返答し、そこからは大学時代にも毎年修行を行っていたとのこと。
にんべんはファミリービジネスですが、現在社内にファミリーは髙津社長ひとりしかおらず、先代は仕事を「家業」と断言していたが、その考え方も時代によって変わるのではないかと髙津社長は話しました。今後はにんべんをひとつの「事業」として発展させていきたいと髙津社長は考えています。
にんべんの新しいチャレンジ「日本橋だし場」。
そして今、にんべんは正に新しい挑戦の第一歩を踏み出しています。和食が世界的に注目を浴びる現在、もっとお客様に“だしの美味しさ”を知ってほしいという思いから「だしを飲むバー」を始めようと決意し「日本橋だし場」を開業しました。これが想像以上に大ヒットし土日は長蛇の列。1日数十杯売れれば良いと計算していたものが、ピーク時には1日1500杯も売れる大盛況ぶり。現在は「日本橋出し場」を一つのブランドとして商品展開を行い、フルサービスのレストランや新商品の開発に力を入れています。
正に『伝統と革新』を実践しているにんべんから“永続経営の秘訣”を伺い、学びを深める場となりました。髙津社長、貴重なお話をありがとうございました!
(文責:VALMEDIA編集部ライター 遠藤あずさ)
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