2018年4月23日 UP
マネジメント

次世代リーダーへ贈る、100年経営のすすめ①

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みなさん、こんにちは。
この度VALMEDIAでは、4月より新コンテンツ『次世代リーダーへ贈る、100年経営のすすめ』を定期配信してまいります。
本コンテンツは、私達VALCREATIONがプロデュースをする「一般社団法人100年経営研究機構」での学びを多くの次世代リーダーに届けたい、という思いからスタートいたしました。「100年経営」というテーマは、これまでアカデミックな世界で議論されてきました。私たちは100年経営研究機構での活動を通して「100年経営」特有の考え方や経営方針が、ビジネスの実務に役立つ内容であると思うに至りました。
しかしこのテーマは、一般的に「学びにくい」「実務に活かしにくい」という印象を持たれています。そこで、若手ビジネスマン、若手経営者が「100年経営」を学び始めるきっかけとなるように、初心者にも分かりやすい内容で実務へのつながりを明確にお伝えしよう、というのが本コンテンツの目的です。

本コンテンツでは、大きく分けて2種類の記事を配信してまいります。
①「100年経営」の基礎を解説した記事
②実際の100年超企業当主のインタビュー記事です。
本コンテンツを通して「100年経営」を学び始め、その学びを実務に生かしていく方が少しでも増えれば嬉しいです。
 
 
 

今、なぜ100年経営を学ぶべきなのか

社会は今、大きな変化の波に揉まれています。
昨今では、急速でIT化が進みAIやロボット業界は大幅に拡大、AIを労働力として活用する考え方が一般化しています。またビットコインやブロックチェーンに代表される仮想通貨市場も着々と構築され、ITリテラシーの有無がビジネスに大きな影響を与える時代となりました。日本国内では2020年東京オリンピックに向けて訪日観光客マーケットが拡大しつつも、人口減少に伴い人手不足が深刻化し、労働市場における質の低下が問題視されています。行きすぎた金融資本主義経済。度重なる超大手企業の不祥事。コンプライアンス違反を牽制し融通がきかなくなる上場企業。さまざまな情報が飛び交う日本経済において、多くの経営者が企業としての“在り方”を模索しています。そして今、そのひとつの方向性として「100年経営」が注目を浴びているのです。

100年超企業は、「激動の明治維新期」「混迷の戦中戦後」「バブル経済の崩壊」など国の上下がひっくり返るような大きな変化を乗り越え、存続しています。この事実は大変な優位性と言えます。100年超企業こそ、現代に求められる“変化に対応していく力”を持つ存在であるということです。つまり私たちは「100年超企業」から、世の環境やテクノロジーが変化した際の“在り方”について学ぶことができるのです。そして「100年超企業」には、必ずといっていいほど自社の“在り方”へ強いこだわりがあります。
今回の記事では、“今なぜ「100年経営」を学ぶべきなのか”という点について、テクニック論ではない本質をお伝えすると同時に、国際的な評価という観点からも深掘りしていこうと思います。
 
 

世の中は“存続する”ことが前提にできている

「100年経営」を推進していくなかで、「会社は永く続かせないといけないのか?」という真っ直ぐな質問をいただくことがあります。確かに、企業はなにかの目的のために存在するのであって、“永く続くこと”を目的としてしまっては本末転倒と言えます。あくまで私たちは、目的を達成するための手段として「100年経営」を目指してほしいと思うと同時に、結果として「100年超企業」は良い経営をしていたからこそ続いている、という事実を強調したいと思います。
そしてもう1点重要なのが、ステークホルダーは“企業が続くことを前提としている”という事実です。例えば、自分が勤める会社が明日潰れるだろうと思って入社する従業員はいませんし、消費者も長期的な保証を前提として商品を購入しています。会計学ですら、企業の存続を前提としてできているのです。つまり、企業にとって“存続する”ということは極めて重要な責任と言えるでしょう。
 
 

国際的に評価される「100年経営」

ここまではあくまでも理屈上の話ですが、他にも“企業の存続”とは違う切り口で「100年経営」が国際的な評価を受けています。今回はその評価のポイントについて2点紹介をさせていただきます。

1点目は、環境保護を重視した経営という視点です。
2007年に「地球環境保護」というテーマでノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元米副大統領は、「100年経営」こそ地球環境保護を実践した経営であると、共感の言葉をくださいました。2014年のことです。
「100年超企業」には、“無理をしない経営”をしているという特徴があります。無理をしない経営とは、「身の丈経営」と言い換えることができます。自分の身の丈に合った経営、つまりは資源の範囲内で経営を行うことでリスクを回避し、大きな損失を防ぐという考え方です。反して、短期的利益を重視する経営方法ではアップダウンが激しく、高リスクであると言えます。例えば、景気が良くなると多くの人材を採用し、そこにお金を投入します。しかし、その景気が悪くなると今度は一気に人材を放出することとなり、今度は人材の解雇に多くのお金を費やさざるをえません。これは人材に限ったことではなく、設備投資でも同じことが言えます。つまり経営資源全てにおいて、短期決戦のやり方では無駄が多く、その分環境に対して負荷をかけているのです。世の中の資源は有限です。「我が社はECOシステムを活用し地球環境保護に取り組んでいます」と謳う企業は多いですが、そのような視点ではなく、本質的に資源の無駄づかいしない経営こそが、「100年超企業」の特徴なのです。ゴア氏はその点に対して大きな共感を寄せてくださいました。

もう1点は、ソーシャルビジネスという視点です。
2006年ノーベル平和賞受賞のムハマド・ユヌス博士は、「事業性」と「社会性」の両立により、貧困に困る多くの人々を救いました。実はこの「事業制」と「社会性」の両立を古くから実践しているのが、日本の「近江商人」だと言われており、近江商人が唱える「三方良し」はソーシャルビジネスと相通じるとユヌス博士から共感の言葉をいただきました。2017年のことです。「100年超企業」の中には、なんとなく経営していたら100年続いていた、という企業は一つもありません。どの企業も、何かしらの山や谷を乗り越えて、100年という節目を迎えています。企業によって理由は異なりますが、100年存続できた理由は必ずあります。企業の長寿要因の具体的な内容については、次回以降の記事で細かく触れていきますが、本記事で強調したいポイントは、「100年経営」の長寿要因には現代社会が求めているエッセンスが多く含まれている、という事実です。つまり「100年経営」を学ぶことで、様々な社会課題を解決するヒントを得ることができるのです。そのような意味で、現代の経営者・ビジネスマンが「100年経営」を学ぶ意義は大きいということをお伝えしたいです。
 
 

日本に「100年超企業」が多いのは当たり前?

日本に「100年超企業」が多いという事実が表立って言われるようになったのは、2007年のNHKスペシャル放送以降と言われています。その特番のタイトルが「長寿企業大国にっぽん」でした。日本には100年を超える企業が、2万5,321社(2014年時点)あると言われており、総数でいうと世界2位のアメリカ、3位のドイツと2倍以上の差をひらき、圧倒的首位に君臨しています。それでは、日本にはなぜ「100年超企業」が多いのか。その問いについては、次回以降の記事で具体的に述べていきたいと思います。
一方で、国際学会では「日本に100年超企業が多いのは当たり前だ」という声が度々あがります。なぜなら、「日本は島国であり、他国に侵略された歴史がないから」というのが主な理由です。確かに日本は外国の植民地となった歴史はなく、そういう意味では外的要因によって経営権を奪われる機会は少なかったと言えます。しかし、日本は“自然との戦い”が非常に多い国です。例えば、台風、地震、津波、火山噴火、に代表される自然災害との戦いです。2011年の東日本大震災は、未だ記憶に新しいですが、自然災害は突如として襲ってきて、会社や工場、更には人を無慈悲に攫っていきます。経営者にとっては強制的に会社を畳まざるを得ない、最大の危機と言えるでしょう。
このような事実を述べると、多くの研究者は「日本は自然災害が多かった割(・)に(・)100年超企業が多い」という認識を持ちます。しかしそれに対して、130年の歴史を誇る浅草のすき焼き屋「ちんや」の六代目当主 住吉史彦氏はこう言いました。「日本には、自然災害が多かったから(・・)こそ(・・)100年超企業が多い」と。これは「100年経営」を学ぶ上での本質とも言えます。
2011年の大震災の時、日本人の人間性が非常に優れていると、海外のメディアから称賛の声が上がりました。非常食の配膳時、限られた食糧を分け合わなければならない苦しい状況下でも略奪や争いは一切起こらず、人々は他者を思いやる心を忘れませんでした。この事実に「日本人は倫理観・道徳観の高い民族である」と海外メディアは報道しました。
このように危機が訪れる度、残った者が協力し励まし合い力をつけていく。その過程の中で「100年超企業」も必然的に増えていったのではないか、と住吉氏は言いたかったのだと思います。
 
 


 
本記事では、“なぜ今、「100年経営」を学ぶべきなのか”という点をお伝えするため、国際的評価のポイントと、テクニック論ではない「100年経営」の本質についてお伝えいたしました。
次回以降は、実際の老舗企業インタビューや、長寿要因である6つの定石についてお伝えします。
 

(文責:VALMEDIA編集部ライター 遠藤あずさ)

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