2018年6月11日 UP
マーケティング

勝ち残るためには、“守るもの”と“変化させるもの”を理解すること。

TAG:

 

みなさん、こんにちは。
4月より開始したコンテンツ「次世代リーダーへ贈る、100年経営のすすめ」、今回は100年超企業当主のインタビューをお送りします。「100年企業」と一口に言うのは簡単ですが、「100年企業」一社一社には現代に至るまでの様々なストーリーがあり、各社とも山や谷を乗り越え100年という節目を迎えています。本コンテンツでは、日本に3万5千社以上あるという「100年企業」それぞれのストーリーをお伝えすることで、『100年続く普遍的な要因』を見出し、その学びを少しでも実務に生かしていただきたい、という思いで配信いたします。
今回は第三弾として、山口県長門市の100年企業「フジミツ株式会社」のインタビュー記事を掲載いたします。

 

100年超企業当主インタビュー その3
~創業130年フジミツ株式会社 5代目藤田雅史 氏~

山口県長門市仙崎という地に根を下ろしながらも、海外戦略を積極的に行い、グローバル企業へと成長を遂げている「フジミツ株式会社」。130年という歴史を誇る老舗企業です。フジミツの現社長は、老舗企業として“守るもの”と“変化させるもの”を仕分けし、老舗企業としての伝統を守りながらも大胆な成長戦略を実施し、企業の拡大へ力を入れています。本インタビューでは、フジミツの成長戦略と長寿要因について5代目社長にお話を伺いしました。

 

蒲鉾屋ではなく、総合食品メーカーであることを示したい

創業130年 フジミツ株式会社
5代目 藤田 雅史 氏

――本日はよろしくお願いいたします。フジミツは昨年創業130周年を迎えられたのですね、おめでとうございます。フジミツ130年の沿革を簡単にお伺いできますでしょうか。

藤田(以下、敬称略):
当社の歴史は、明治20年(1887年)、初代 藤田久蔵が長門市仙崎において蒲鉾製造業を営んだところから始まります。その後、二代目の 藤田光蔵が「藤光商店」と名付け、以来「フジミツ」という社名は続いています。三代目の 藤田久作は下関へ営業所を開設。社名を「藤光蒲鉾株式会社」と変更し、焼き抜き蒲鉾から揚げ蒲鉾までを製造する“蒲鉾の総合メーカー”へと発展させました。4代目の父は、更なる拡大を目指し生産工場の建設に力を入れ、三隅工場・仙崎工場を竣工しました。同時に社名を「藤光蒲鉾工業株式会社」へと変更しています。
因みに「仙崎の蒲鉾」というのは、大阪あたりまではよく知られているのですが、それは仙崎が満州引揚船の上陸港であり、関西に実家がある引揚者はみな仙崎の蒲鉾をお土産に買って帰ったからです。今でこそ蒲鉾業界は不況で企業数は減少していますが、仙崎の蒲鉾というのは一つのブランドを確立しているのです。

 

――そうだったのですね。蒲鉾業界が不況の中「フジミツ」が成長を続けて来られたの要因を教えていただけますか。

藤田:
蒲鉾を含めた“水産練製品業界”は、30年前の昭和61年と比べると出荷額が約700億円減少しています。それに伴い事業者数も30年前は2,384件あったのが、現在は774社まで減少していますが、きちんと計算すると1企業あたりの出荷額は増えていることが分かると思います。つまり、水産練製品業界は“寡占化”が進んでおり、少ない企業が売上を独占しているのです。当社も先代の様々な努力により、生き残りの中に入ることができました。
しかし現実的に考えて、私は国内市場の減少傾向は止めることができないと考えていますので、今後は内需拡大が期待できる中国や東南アジアへの海外戦略が鍵になると考えています。当社では近年、台湾、韓国への輸出を強化、中国とベトナムでは現地のビジネスパートナーと合弁会社を設立し日本の高い製造技術を武器に新たな市場開拓を推進しています。
私の代で「フジミツ株式会社」と社名をカタカナへ変更しましたが、これは海外への展開を考えていたからという理由もあります。また、多用な食品メーカーを承継し、水産練製品以外も扱うようになっていたので、“食品の総合メーカー”であるということを示すべく「蒲鉾」という言葉を外しました。これには先代(父)は大反対でしたが、次の時代へ勝ち残るためには必要だと考え、断行しました。

 
 

マーケティングとターゲッティングを行い、新商品を開発

――他に、社長の代で変革したことはございますか?

藤田:
父は「拡大をする代」でしたが、私は「商品開発をする代」だと思っており、新商品の開発には力を入れてきました。
先程もお伝えしたとおり、蒲鉾の消費量は減少の一途をたどっていたので、何か新しい商品を開発しなければならないと常に考えていたのです。新商品の開発を成功させるためには流行を生まなければならない。そしていつの時代も流行を作るのは女性だという認識があったので、中年男性市場をメインとしている蒲鉾ではなく、若手の女性をターゲットにした新しい商品を開発したいと考えていました。
そんなある日、新商品のことを思案しながらスナックでお酒を飲んでいると、おつまみで置かれているチョコやせんべいが目に留まり、「皆これが好きで食べているわけではないよな」と思ったのです。そして「お菓子感覚で食べられる蒲鉾が置いてあるほうが、お酒を飲みに来たお客様は喜ぶのではないか」と思いつき、その翌日に「蒲鉾のお菓子」を作ってくれと頼んですぐに作らせました。当時は「こんにゃくだってお菓子にできたんだから、蒲鉾もお菓子にできるだろう!」と言って作らせたのですが、今考えると全く理屈になっていませんでしたね。笑
その結果生まれたのが、今当社でぐんぐん売上を伸ばしている人気商品「チーズころん」です。蒲鉾の中にチーズが入っていて、お菓子感覚でつまめるところが良いと、狙い通り若い女性の市場で流行しました。
しかし、商品完成から「チーズころん」がヒットするまでには時間がかかりました。始めは新商品として販売しても誰も見向きもせず、全く売れなかったんですね。挙げ句先代からは「そんなのは邪道だ!」と大反対をされ、「止めろ止めろ」と言われていましたが、その言葉が逆に私に火をつけました。「絶対に売ってやる」と。その後、運良く地元の大谷山荘のお菓子としてお部屋においていただけることになったのですが、そこで宿泊客に大ヒットしたのです。新商品をいきなり手にする人は少ないので、まず試してみる場があるのは重要だと感じましたね。
余談ですが、散々反対していた父は「チーズころん」がヒットしたら「社長を交代してやる」とまで言っていたのですが、結局その当時は交代してくれませんでした。

 

――お父様とは幾度となくぶつかり合っているようですね。
藤田:
そうですね。私も30歳までは父の言うことを聞こうと自分で決めていたのですが、30歳を過ぎてからは意見の食い違いで喧嘩ばかりでした。笑

 
 

「守るもの」と「変化させるもの」を仕分けすることが長寿要因

――フジミツの事業承継の特徴についてお話しを聞かせていただけますか?

藤田:
フジミツでは、長子継承型世襲により、藤田家が代々経営を行っています。そのため、私は生まれた時から次期社長と決まっていましたので、幼い頃より父から経営に対する考え方をたくさん聞いて育ちました。「従業員は大切にしろ」や「お客様は大切にしろ」など現在副社長を務める弟の10倍は経営の話を聞いていたと思います。

 

――幼い頃から自然と社長になるための教えを学んでいたのですね。それでは、最後にフジミツが130年経営を続けてこれた長寿要因についてお伺いできますでしょうか。

藤田:
これは私の考えではありますが、老舗企業として「“守るもの”と“変化させるもの”をきちんと仕分けしていること」だと思います。
130年前と全く同じスタイルで現代を生き残ることはできませんので、時代に合わせた商品開発や成長戦略としてのM&Aは必要不可欠だと私は考えています。そのため、今の我が社に必要な変革は自分で判断しどんどん進めています。
一方で、老舗企業として守らなければならないこともあります。それは「従業員、お客様、地域を大切にする」という経営に対する考え方です。また、現在は様々な食品を扱っておりますが、原点である蒲鉾だけはいくら赤字でも辞めてはいけないと思っています。創業当時からあるこだわりの商品なので、フジミツのシンボルとも言えます。大変な赤字を生んでいたとしても、昔ながらの蒲鉾を辞めるという気持ちは全くありません。
これからも老舗企業として変えてはならないものを守りながら、様々な変革を起こしていきたいと思います。

 

――藤田社長、ありがとうございました!フジミツの今後の成長と拡大を祈念しております。

 


創業130年「フジミツ株式会社」のインタビュー、いかがでしたでしょうか?
伝統を守りつつも時代に合わせた“革新”を行ってきたことが長寿企業たる所以であることが分かりました。
 
VALCREATIONは、“日本的経営を世界標準に”をVISIONに掲げる、一般社団法人100年経営研究機構
の様々な活動をプロデュースしています。
100年経営研究機構では、定期的に研究会や視察会などの活動を行い、経営者や経営実務者が100年経営について
学ぶ機会を提供しています。
長寿企業について知りたい、学びたい方は、こちらをご確認ください!

 
(文責:VALMEDIA編集部ライター 遠藤あずさ)

Related Article

『竹島塾』第2期 二日目開催報告
10月11日(土)『竹島塾』第2期2日目を開催いたしました。 『竹島塾』では、全2回の講義とワークショップのなかで…

2018年6月11日 UP

マーケティング

by Valmedia編集部