2017年11月10日 UP
マネジメント

100年経営アカデミー後期3日目

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11月4日(土)六本木のハリウッド大学院大学にて、100年経営アカデミー後期の3日目を行いました。
 

1限目は、本アカデミー主任講師であり、100年経営研究機構の後藤俊夫代表理事による講義を行いました。
テーマは「ファミリービジネスのガバナンス」です。

冒頭、TOYOTAファミリーである豊田家の持ち株保有比率の推移を参考にしながら、なぜファミリービジネスの持株比率は低減するのか?という点について考えていきました。
これまでの講義を振り返れば、いくつかの要因が思いつきます。例えば、事業承継によって株式が分散してしまうから。事業発展により増資をするから。あるいは株式を売却することで資金調達を行うことがあるから。受講生からはこれらの意見が挙がりました。
持ち株比率が下がるということは、ファミリーにとってはリスクとも言えます。特に上場後はファンドに乗っ取られてしまうという危険もあるため、株主総会での特別決議を守る上でも最低限1/3の保有は守った方が良い、というのが一般的な考え方です。
この最低限の持ち株比率を守るためにもファミリービジネスのガバナンスが重要となる、と後藤代表理事は強調しました。

その後、後藤代表理事はガバナンスが上手くいかずファミリー間で対立が生じてしまった例として、様々な企業を紹介しました。
中でも、老舗ファミリー企業である日本坩堝株式会社の対立は、元社長である父の死後、承継予定ではない兄に偽物の遺言書を作られ、会社を乗っ取られてしまったという内容で、あまりの凄まじさに受講生も驚きを隠せませんでした。結果として、承継者である三男夫婦のもとに会社は戻ったのですが、戦い続けた十数年は、大きな遠回りであり、大きなマイナスであったと言えるでしょう。
 

お昼休憩をはさみ、2限目には特別講師として、キッコーマン創業家の一つである高梨家分家のご出身であり、世界的ファミリービジネス組織“NPO法人ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン”理事長の高梨一郎さんにご登壇いただきました。
高梨さんからは、まずキッコーマンがどのような体制でガバナンスを行っているのか、という点についてお話を伺いました。

キッコーマンは、1917年に近隣で醤油醸造を営む、茂木・高梨一族の8家が大同合併したことに始まります。
個人経営を会社経営へ転換することは勿論容易ではなく、一族の反発も然ることながら、労働者が216日間ストライキを起こすなど、非常に困難な時代を迎えることとなりました。
しかし、この困難を乗り越えた経験があったからこそ、戦中戦後の企業存亡の危機を克服できたのではないか、と高梨さんは言います。

キッコーマンでは、
・同族からの入社は各家から一人に限定する。
・社長は特定せず、一族の中で一番経営能力のあるものを選ぶ。
・創業家は社長人事には口出しをしない。
という経営体制の元、ガバナンスを強化しています。創業家だからといって優遇されることはなく、むしろ創業家だからこそ人一倍努力をして、社長への階段を上がっていかなければならない、という競争が生まれやすい環境となっています。

また、キッコーマン創業家の一つである茂木家では養子縁組を多用しており、血筋よりも能力を優先させていることが分かります。そのためキッコーマンでは、外部の血を入れることに対して抵抗はなく、実際に創業家以外の社長を選出することもあります。

一方高梨家では、一族の長男を一人キッコーマンへ送り、残ったファミリーで東京コカ・コーラを傘下に持つ、丸仁ホールディングスグループを運営しています。
しかし、経営体制は非常に自由で、今の高梨さんの代でもファミリーの団結は薄く、意見の相違もあり、話し合いの場も作れない状況が続いているそうです。
「この状況をどうにか打破していきたい」という高梨さんの言葉に、受講生一同ファミリービジネスの複雑さ難しさを肌で感じました。
 

3限目は、2限目の高梨さんの話を受け、「どうしてキッコーマンは伸びたのか?」また「高梨家の現状を打破していくための施策」についてディスカッションを行いました。

高梨家についてのディスカッションでは、“一度ファミリー全員を集めて話し合ったほうが良いのではないか”という意見が多く、その場合は、「何をテーマに」「誰を中心に」「何について話すべきなのか」が重要である、という後藤代表理事のアドバイスを受けて、円滑に話し合いを行うための様々なアイデアを出し合いました。
 

講義終了後は、講師を交えた懇親会を催し、講義中に聞けなかった質問やこれからの高梨家の対策など、更なる意見交換を行いました。
 

次回4日目は、11月25日(土)にFSX株式会社(旧藤波タオルサービス)取締役会長の藤波璋光さんを特別講師に迎え、
「ファミリービジネスの事業戦略」をテーマに学んでまいります。

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by Valmedia編集部