2018年11月6日 UP
マネジメント

「危険予知」こそ経営者の重要任務。現場の“アラーム”が組織を救う!~日本的経営の学び舎Ⅳ~

TAG:

10月24日(水)、技術経営士の会 & VALCREATION 共催企画「日本的経営の学び舎」第四回目を開催いたしました。
日本的経営の学び舎は、戦後復興からバブル経済、第三次産業革命、リーマン・ショックを経験され、日本経済の最前線で活躍された「技術経営士」を講師に迎え、長い経験から得られた知見や知恵を「日本的経営」という切り口から、明日を担う若き次世代リーダーに向けて伝授いただく場です。

第四回目は、技術経営士の会 会員であり、株式会社IHI顧問・元代表取締役副社長の中村房芳さんを講師に迎え、中村さんが“経営の現場”で培ったあるべき経営的発想について事例を基にご講話いただきました。

 

「戦略」を定期的にチェックすることで軌道修正ができる。

中村さんは慶應義塾大学卒業後、株式会社IHIに入社。以降35年にわたりターボチャージャー一筋で設計・開発に携わりました。ターボチャージャーは、簡単に言うと自動車用のエンジン部品です。中村さんがターボチャージャー事業で経営に携わり始めた頃から市場は急成長を迎え、事業経営10年の間で売上は4倍増。リーマン・ショック期には売上は減少していますが、それも2年間で立て直しました。


中村さんが経営時代に重要視していたのは「戦略」だと言います。目標を達成するためには戦略が必要ですが、戦略を具体的に振り返る機会はなかなかありません。そのため経営者は意識して定期的に「戦略」をチェックする必要があります。チェックする際は「目的的」「三現主義」「網羅性」「定量性」「ストーリ」の5つを確認すれば、戦略の良し悪しと弱点を見つけることができると説明しました。良い戦略を作ることは難しいですが、定期的にチェックさえしていれば間違った方向に進むことはありません。
また目標には期限があるため、達成・未達成にかかわらず、期限が過ぎれば次の目標に向かって走らなければなりません。中村さんは経営の現場で内外双方に目標を共有してきましたが、部下のモチベーションを維持し、目標を達成し続けること/目標に向けて走り続けることが本当に大変だったと話しました。

 

定時退社日を守らせることで、約束や目標を守る組織体質へ改善。

中村さんが経営に携わるようになった際、IHIでは従業員の疲弊や体質に大きな問題を抱えていました。長時間労働のため従業員は精神的に疲弊し、どんどん辞めていく。そのようなスパイラルだったと言います。また体質的には“約束は守らない、そのため目標が達成できなくても仕方ない“という考えが定着してしまっていました。それに対して、中村さんは週一の定時退社日を設け、これを徹底的に守らせました。

もちろん、はじめは業務が終わらないからと残業する人も多かったそうですが、中村さんはできる限り定時退社日にはオフィスにいるようにし、実力行使で帰らせたそうです。定時退社日を守らせることで、“計画的に業務を終わらせる”ということ、“約束は守らなければならない”ということを従業員に植え付けていき、結果、約束や目標を守るように組織全体が改善していったそうです。

 

危険に気づく能力が経営者には必須。

次に、経営者の重要な任務である「危険予知」についてお話がありました。
危険予知には大きく分けると3つのフェーズ「気づく」「考える」「実行」があります。その中でも特に重要なのが「気づく」ということです。現在大手企業でも様々な不祥事が多発しており、問題が表面化するまで経営陣も知らなかったということが往々にしてありますが、その原因はいくつかに分けて考えることができます。

例えば、問題が大きすぎて正視するのが怖くなり見て見ぬふりをしている場合や慣れっこになってしまい本当の危険を危険と認識できなくなってしまっている場合。あるいは、現場では危険を認識し経営側へ報告はしているが、アラームを出していないため経営側が危険だと認識できていない場合が考えられます。現場側も危険要素に対して「危険です!」とはなかなか言いにくいものです。そのような状況を理解しつつも現場に対して“アラームを鳴らすこと”の重要性を伝えること。そして経営側は常に危険に気づけるようにアンテナをはっておくこが重要であると中村さんは話しました。

 

企業の意志を継続して共有することがグローバル経営の強さとなる。

最後に「日本的経営」についてお話があり、中村さんは「日本的経営」は今後グローバル化が進行する上で“あるべき経営の形”と話しました。「日本的経営」の特徴は、企業の意志が脈々と受け継がれ創業家、従業員、ステークホルダーに共有されているという点です。今後グローバル化が進行するにつれ、文化を異にする海外が主戦場となる場合は、なおさら企業の意志をきちんと持ち共有していくことが重要です。その上で中村さんは、企業の意志とは“ブランド”と“戦略”であるとまとめ、日本的経営を活かしたグローバル経営を推奨しました。

 

講話のあとは、食事を取りながら自由な意見交換を行い、経営者は孤独であるがその中で中村さんは何をモチベーションに頑張っておられたのか、あるいは経営者として一番辛かったこと、嬉しかったことは何か。などの質問にお答えいただきました。

 

さて、次回の「日本的経営の学び舎」ですが、当初予定しておりました11月21日(水)開催分につきましては、諸般の事情によりお休みとさせていただきます。ご了承くださいませ。

そのため、次回開催日は12月19日(水)でございます。講師に井上 健さん(日本電設工業株式会社顧問、元代表取締役社長)をお招きし、「日本的経営と米国的経営の比較」というテーマでお話しいただきます。

<詳細はこちら>

 

次世代を担う志ある若手経営者、若手ビジネスパーソンのご参加をお待ちしております!

(文責:VALMEDIA編集部ライター 遠藤あずさ)

投稿者プロフィール

Valmedia編集部

Related Article

100年経営アカデミー後期3日目
11月4日(土)六本木のハリウッド大学院大学にて、100年経営アカデミー後期の3日目を行いました。   1限目は…

2018年11月6日 UP

マネジメント

by Valmedia編集部

『新志塾』第12期 2日目開催報告
2018年7月21日(土)、東京 渋谷にて『新志塾』第12期2日目の講義を行いました。   初めに、1日目の講義の復…

2018年11月6日 UP

マネジメント

by Valmedia編集部