- 2019年7月8日 UP
- 教育
学校と塾、双方の豊富な経験で見出した『ヒグチ式』で「積極人間」を育てる!
長年にわたりビジネスの第一線で活躍されてきたトップリーダーから自身の体験談を伺うインタビュー企画。
今回は第3弾として、子どもの基礎力と学習意欲を高める『ヒグチ式』を開発された樋口泰久先生にお話を伺いました。
樋口先生は30年超の高等学校勤務を経て、現在は小学生・中学生を対象とした学習塾を運営しています。「学校」と「塾」という似たようで非なる双方の教育に従事する中で、樋口先生は生徒が「つながりに気がついて勉強が面白くなる」問題の解き方を見出しました。その学習法を『ヒグチ式』として体系化し、現在は多くの教育の場に提供するべく、学習法のさらなる改良に取り組んでいます。
今回は、樋口先生の『ヒグチ式』開発に至るまでのエピソードと次世代教育に必要な考え方を伺いました。ぜひご覧ください!
自身のビジョン達成のため、セカンドステージで「塾」へ挑戦
――樋口先生、本日はどうぞよろしくお願いします。
先生は高校教員を退職後に塾を開講され、多様な方面から教育にアプローチしていらっしゃいますので、どのようなお話をお伺いできるかと楽しみにしておりました。
樋口(以下敬称略):
こちらこそよろしくお願いいたします。
私自身は、28歳から63歳まで高校教員として物理を教えていました。教員退職後は、多くの方々にご支援いただき、小学生・中学生向けの個人塾を始めました。はじめは生徒二人を同時に教えるスタイルでやっていたのですが、一人にやらせている間に一人に説明すると、生徒にしっかりわかってもらう共感的な教え方にならないと思い、現在はマンツーマン形式で教えています。お金のことを考えるとなかなか厳しいものですが、私自身も一人の生徒に向かったほうが断然面白いと感じますので、しっかり教えることを重視して塾運営をしています。
――樋口先生がヒグチ式を開発するに至ったきっかけを教えていただけますか。
樋口:
少し長い話になりますがお付き合いください。
私は教員時代にずっと考えていたことがありまして。それは「どうすれば生徒にわかりやすく教えられるか?」ということでした。例えば、物理のニュートンの力学があるでしょう。授業の中でそのイメージをいかにわかり易く伝えるかというのが教員にとっては第一の目的です。
「伝える」というのは、ただ教科書に書いてあることを受身的に理解するだけでは生徒にとって「生きる力」になっていません。生徒がその法則を使って他にもいろいろなことへ応用し、自分の立場で使えるようになるところまで教えることが重要なのです。その結果として教科書の中身もきちんと理解して点数もとれるということです。
私自身、教員時代にその方法のビジョンが見えましたが、それを具体化することは教員にとっては永遠のテーマなのだとも感じました。それは、教える対象である生徒が時代と共にどんどん変わっているからです。生徒の変化に合わせて教員も教え方を変えていかないといけません。
――教員も長い道のりを経て一流の教え方を身につけるのですね。樋口先生が退職後、塾に挑戦されたのは教育の探求のためでしょうか?
樋口:
はじめは「塾」をやるかどうかは曖昧だったのですが、ある教育者の集いで、教員時代から考えていた私のビジョンに興味を持っていただいた方から「塾をやるのが良いのでは」とアドバイスいただいたことがきっかけとなりました。その時私は「松下村塾」のようなことをやりたいと語ったんですね。
しかし教員の世界は狭く、教員から塾の先生になろうとする人はなかなかいないものです。それははっきり言って“できない”からなんですね。実際に塾を始めようとすると、場所の確保やチラシ作成や配布、保護者対応など全てをやらなければならず本当に大変でした。教員というのは教科の指導者ですからトータル的な「会社経営」という視点は全く持ち合わせていないのです。そこで私は経営コンサルタントに指導をいただき、塾の開講から仕組みづくりまで経営的な考えを全て教えてもらいました。それは本当にありがたかったです。おかげさまで無事に塾を開講し自分の理想に近づく形で生徒を教えることができています。
「わかりやすく教える」ことを追求し、効果的な学習法「ヒグチ式」を開発
――実際に塾を始めて、気づかれたことはありますか?
それはもうたくさんあります。その中でも一番の気付きは「塾の価値」でした。
正直なところ、私は教員時代「塾」を馬鹿にしていたんです。塾は私たち学校教育の周辺で仕事ができていると。私だけかもしれませんが、そんな感覚を持っていました。
ただ実際に自分でやってみると、私のその感覚は大きな間違いだということがわかりました。例えるなら、学校は「正面玄関から入ってきた」生徒を教える場。塾は「台所から個人的に入ってきた」生徒を教えるイメージです。塾ではどのように教えるかも重要ですが、そもそもいかにやる気にさせるか、というところから始まります。また小学生や中学生の場合は親が子どもを塾へいれるので、親サイドのこともどんどんわかってきました。塾は生徒の“家庭”と密接につながる場なのです。
そういう意味で私は、学校視点と家庭視点の両方を経験しています。同じ「勉強を教える場」ではあっても、それぞれは互いに補い合う関係であり、学校からも家庭からも生徒に向かって適切に教育することで、生徒は自分の長所を一気に伸ばすことができると感じています。
――学校の教員という立場、塾の先生という立場、両方の豊富な経験が樋口先生の一番の強みなのでしょうね。
樋口:
自分で言うのもどうかと思いますが、本当にそのとおりだと思います。だからこそ私はヒグチ式を次世代に伝えて、それを発展させてほしいと強く願っているのです。
ヒグチ式は、私が教員として現役で教えていたときには気が付かなかったことです。つまり定年まで普通に仕事をして気づくことはまずありえません。それは教員の仕事量が多いことと、わかるように教えることだけでも「完成のない永遠の仕事」だからです。人は歳とともに知識と経験がどんどん増えていきますが、残念なことに一定の年齢で退職し、更に人生には終わりがあります。だからこそ効果的な学習法に気がついた私が、誰でも使える形として伝えていかなければと感じています。
ヒグチ式が生まれるきっかけは、元々は樋口塾のオリジナルテキストだったんです。教えていると皆必ずつまずくところがあるのですけど、算数の場合は「割合 (%)」ですね。これをいかにわかりやすく教えるかということで、自分でオリジナルテキストを作って教えていたんです。すると段々とテキストの数が増えてきましたので「それじゃ、これを本にしようかな」と思ったんですね。初めは「塾の中で間に合えば良いかな」という気持ちだったのですが、本を作りたいと周りの人に語っているうちに、どんどんとヒグチ式の構想が膨らんできたんです。私は「こうすれば生徒は理解する」ということが自分ではわかるのですが、これは私個人の教え方です。これでは世の多くの生徒を導くことはできません。それなら私の学校経験と塾経験とを組み合わせて、教える人が活用できる学習法を作って世に出したほうが良いのではないか、と考えるに至りました。
自家用テキストのときはある程度のレベルでしたが、他人に使ってもらうものを目指すとレベルが格段に進歩しまして、自分でも驚いています。
「ヒグチ式」で後押しして、自己教育できる段階に到達していない生徒の可能性を拡げたい
――ヒグチ式では、勉強ができること以外にどのような能力を身につけることを目標としているのですか?
樋口:
表の狙いは、問題をとけるようになること。裏の狙いは、「指示待ち人間をつくりたくない」ということです。つまり「積極人間」をつくりたいのです。
生徒が将来社会に出たら、これまで体験していない新しい場面や考え方・哲学に触れます。これを自分の中に取り入れて、咀嚼して、使える力に高めて、実際に使う必要があるのですが、生徒のとき事前に練習をしておくと同じ困難さでもハードルが低くなりますよね。私は、ヒグチ式がその基礎練習の役割を担いたいと思っています。社会にでて、今までの経験では簡単に対応できない状況を迎えたときに、「確かめ算・入れ替え練習」のように主体的に自分の思考力を動かして、別の場合を考えてアウトプットする力をヒグチ式で養って欲しい、というのが願いです。
教員時代にも感じていましたが、生徒の中には才能があり「自己教育ができる」子もいます。ただそれは限られた生徒です。自己教育ができない生徒のほうが圧倒的多数です。ヒグチ式は、そのような子達が自己教育できるようになるためにあります。前向きな気持ちはあるんだけれどもなかなかうまくいかない、という子達に学力を伸ばす学習方法を「問題集」の形に整理して提供したいと思っています。それはなかなか大変なことですが、私はとても面白いことに感じています。そしてそれが私の役割なのかなとも感じています。「勉強ができるようになる」という経験を通して、生きる力や主体的学習能力を養い、将来において今までと違うことを考えていく下地を若い頃から鍛えてあげたいと思っています。
――勉強を通して、その生徒の人間性も磨いていけるのですね。ヒグチ式が全国へ広がれば前向きな若者が一気に増えていきますね。
樋口:
そう思います。大げさな言い方ですが「日本人の学力の底上げ」に貢献できれば最高に嬉しいと思っています。
もう一点、ヒグチ式が目指すものは、「内面的に美しい生き方(すがすがしい生き方)」。伸び伸びと行動して、結果として人々が感動する生き方です。そのためにも自分本位にはなってほしくない。他人のことも考えて、場合によっては少し自分を犠牲にするくらいの心意気を持ってほしいです。結局、Win-Winになるためには頭を使ってレベルアップしないといけません。その頭を使う訓練としてヒグチ式を活用してほしいと思っています。
――最後に樋口先生の今後の目標を教えていただけますか?
樋口:
ヒグチ式に一層の客観性を持たせて、多くの人に使ってもらえるように、最終系まで持っていくことが当面の目標です。今は奈良県五條市の学習塾でヒグチ式を使って数学を教えてもらっていますが、実際に使ってみての忌憚のない意見をもらいながら、今の段階にまで改良しています。
塾の先生は同じ目標をもつ同志であり、基本的に同じ悩みを抱えているので、ヒグチ式も浸透していきやすいと思っています。繰り返しになりますが、ヒグチ式は退職まで教員をやって、その後塾で教えてやっと見出した学習法です。簡単に気がつくことではありません。だからこそ気付いた私がお伝えしなければならない。それがミッションだと思っています。ヒグチ式が多くの若者を一層前向きにすることに貢献したい。その未来に向けて更に努力していこうと思います。
――樋口先生、情熱的なお話をありがとうございました!今後のヒグチ式の展開を楽しみにしております。
(文責:VAMEDIAライター 遠藤あずさ)
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